ブラックホールに吸い込まれたものは戻ってくることはありません。宇宙で一番速いのは光です。その光さえ吸い込まれたら抜け出すことが出来ません。ブラックホールに吸い込まれた人はそうなるのでしょうか。
もう少し言うと、
事象の地平線を超えるとどんなものも戻ってこれません。そしてブラックホールの中心には特異点が存在すると言われています。
事象の地平面?
特異点?
と、いう方に以下の二つと合わせて簡単に説明してみます。
・二つの観測点
・潮汐作用
[事象の地平線]
一般相対性理論で予想される天体として、シュバルツシルトによって求められたものがあります。それは回転していないブラックホールの解で、シュバルツシルト解(シュバルツシルト半径)とよばれています。
シュバルツシルト半径を超えたものは光さえ帰れないので、事象の地平線(地平面)と呼ばれています。この半径よりも小さい天体はブラックホールとなってしまいます。
参考:[ブラックホール 事象の地平線]
[特異点]
そこは物質の密度が無限大なってしまう点で、通常はブラックホールの中に隠されていて見ることができない点です。
もし特異点が裸でいたとしたら、私たちの時空間の物理法則が成り立たない場所なので、つまりは因果律が成り立たない点なので、その点からいきなりカブト虫や宇宙船、とてつもなく巨大な赤ちゃんがと飛び出してきても原理的には問題はありません。そんな点が裸でいるとは考え難いので、ブラックホールとセットで存在すると考えられています。
[二つの観測点]
ブラックホールに落ちた場合、遠くにいる観察者から見た場合と落ちていく自身から見た場合では違いがあります。
・遠くにある観測者の視点
ある宇宙飛行士が事故でブラックホールに自由落下していく場合、彼または彼女は事象の地平面に向かってどんどんと落ちていきます。しかし、やがてスローモーションのような動きになり事象の地平面に至るころには止まったように見えます。また、徐々に薄れていき地平面に着く頃には透けて見えると考えられています。
・自身の視点
ブラックホールに落ちていくとき、スローになったり透けるということはありません。あっさりと事象の地平面を越えていきます。
[潮汐作用]
潮汐作用は小さいブラックホールほど強く働きます。
太陽質量程度のブラックホールでは100万倍の潮汐作用で身体が引き延ばされるのであっという間にスパゲッティ化されて死でしまいます。しかし、例えば太陽質量の10^10倍のブラックホールの場合は潮汐作用がとても軽微なので、知らぬ間に事象の地平面を越えることになります。こはこれで怖いですよね。
以上、ブラックホールのお話でした。
うん? 待てよ……。遠い視点と自身の視点の両方を考えると、どちらの私が真実なの?
真実は一つでないの? と、なりますよね。
これを「ブラックホール情報パラドックス」というらしいです。
では、どう考えるのか。
事象の地平面を挟んで存在する同じ二人となりますが、ブラックホールの外側にいる私と内側にいる私は共に事象の地平面を挟んで情報をやり取りができないので問題ないと言われています。
疑問は他にもあります。エントロピーはどうなるんだ?
例えば巨大な宇宙船がブラックホールに落ちた場合、そのエントロピー減少をどう考えるのか?熱力学の第2法則は成り立たなくなってしまいます。
これは、物体をブラックホール投げ込むことによるエントロピー減少(全宇宙のエントロピー減少)に対してブラックホールのエントロピーが増加するので問題ないと言われています。
これはホーキング博士がブラックホールのエントロピーについて発見したことで、エントロピーは事象の地平面の面積によることがわかりました。先ほどの超巨大な宇宙船をブラックホールに投げ込むとブラックホールの事象の地平面の面積が増えることを証明したのです。
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以上、ブラックホールについてでした。