宇宙の終わりがいつ来るのか。今回は「真空崩壊」による終末についてです。
世の中の全てのものは「強粒子」と「軽粒子」に分類されます。強粒子は「ハドロン」と呼ばれ、そこに属する粒子をクォークと言います。クォークは6種類の粒子で構成されています。性質の似た二つを組にして世代に分けられています。
クォーク | 電荷 (単位e) | |
第1世代 | ダウン d アップ u | – 1/3 2/3 |
第2世代 | ストレンジ s チャーム c | – 1/3 2/3 |
第3世代 | ボトム b トップ t | – 1/3 2/3 |
クォークは1/3の電荷を単位にしていて、陽子は(u, u, d)で構成され電荷は1です。中性子は(u, d, d)で構成され電荷は0です。
一方、軽粒子は「レプトン」と呼ばれ、そこに属する粒子をレプトンと言います。電子を含む6種類の粒子がそこに属しています。
レプトン | 電荷 (単位e) | |
第1世代 | 電子 電子ニュートリノ | -1 0 |
第2世代 | ミュー粒子 ミューニュートリノ | -1 0 |
第3世代 | タウ粒子 タウニュートリノ | -1 0 |
現在、クォークとレプトンが万物の基本要素と考えられています。
地球上のほとんどの物はアップクォーク、ダウンクォーク、電子でてきています。それは、前述したとおり、陽子や中性子がそれらクォークで出来ているからです。
全ての物質に働く力は四つしかありません。
電磁気力、弱い力、強い力、引力です。
・電子ー原子核(陽子)に働く「電磁気力」
・放射性崩壊を引きおこす「弱い力」
・クォーク間に働く「強い力」
・天体を支配する「重力」
これら四つの力を伝えるものを「ゲージ粒子」と呼びます。
・電磁気力は「光子」で力が伝えられます。
・強い力は「グルーオン」で力が伝えられます。
・弱い力は「ウィークボソン」で力が伝えられます。
・重力は「グラビトン」で力が伝えられます。
力の種類 | 例 | 強さ (強い力を 基準とした場合) | 作用範囲 | ゲージ粒子 (質量) |
強い力 | クォーク間 | 0.2 | 10の-15乗 | グルーオン(0) |
電磁気力 | 原子間 | 10の-2乗 | 無限大 | 光子(0) |
弱い力 | 原子核の ベータ崩壊 | 10の-5乗 | 10の-18乗 | ウィークボソン (陽子の90倍) |
重力 | 天体間 | 10の-39乗 | 無限大 | グラビトン(0) |
表をみて「あれ」と思った方、そうです不都合なことにウィークボソンには質量があると観測されたのです。他のゲージ粒子には質量がありません。そこで考え出されたのが「真空のヒッグス場」です。つまり、ヒッグス場の中ではウィークボソンには質量が生まれます。
真空は「場」と呼ばれています。電子が真空中に現れるにはエネルギーが必要です。エネルギーを与えることで粒子となって現れます。他の粒子も同じです。しかし、ヒッグス粒子はちょっと異なります。
真空のエネルギーがゼロでも真空にヒッグス粒子が薄らと見えています。ヒッグス粒子はとても重いので相当のエネルギーを与えないと現れません。つまりエネルギーを持たなくても真空はヒッグス粒子の性質を持ちます。
そう考えることでウィークボソンが重さを持っていても、全てがうまくいくと考えられています。この理論体系を「標準理論」といいます。
ところで、私たちの宇宙が「真の真空」か「偽の真空」かどうかは、ヒッグス粒子とトップ・クォークの質量によりわかるそうですが、精度のいい値を取れないので今は不明です。
では、仮に私たち宇宙の「真空」が真の安定状態でなかったならば、どうなるのでしょうか。「偽の真空」にトンネル効果で「真の真空」のエネルギーが流れ込み「真空崩壊」が引き起こされます。突然に「偽の真空」の領域に泡のように発生したエネルギーは光速で膨張していきます。それにより近接の「偽の真空」が連鎖で次々と崩壊していきます。あまりに早すぎて死ぬときは死んだと思わないでしょう。それだけが慰みですね。
いつ起きるかははっきりとはわかりません。今始まったならば、それがすぐ近くの時空で起きれば直ぐにでも死にますが、数千光年離れた場所なら数千年後に訪れます。数十億光年ならば太陽による終末を考えた方が良いでしょう。