著者 クリストファー・プリースト (Christopher Priest)
翻訳 古沢 嘉道、幹 遥子
出版社 早川書房
翻訳出版 初版 2017年
あらすじ
冷えはじめた二人の関係を改善したく妻メラニーが赴く戦乱のトルコ、アナトリアに同行する夫ティポー・タラント。しかし彼は喧嘩を最後に、ひとり病院を抜け出したメアリーを襲撃で失ってしまう。三角形の痕跡を残して。そこから、タラントの長く不思議な旅が始まる。タラントが出会う女性たち、H・G・ウェルズと語らう手品師、国を追われた女性パイロット、彼女に恋をする飛行機整備兵、多勢の人生が錯綜し何度も急転しながら終幕に向けて進んでいく。
感想
逆二乗則の破れにより現れるすぐそこのにある空間(プランク長さほどの余剰次元)の隣接界が存在し(そのように解釈しました)、人々の生き様は、糸をよって紡ぐうちに確率波が収束するように落つるべきところに落ちていく。そしていつの間にか糸の色が変わるように彼は彼に変わり、彼女は彼女にかわる。そして機がおられ鮮やかな生地ができていく。ガタッ ピシッと。そんなイメージな本作でした。八章で構成されていて六章あたりから少しずつ謎が解明?されていきます。七章から物語が大きく展開していきラストへと突き進みます。ともかく情景が湧く美しい文体は訳された方の技量に負うとは思うが、原著の巧みな筆捌きがこの長大な作品を読み進められる動力であるのは間違いはありません。
この作品はプリーストの集大成的な位置づけにあると言われています。過去の作品を読んでから読む方が良いとは思いますが、私は過去作品は「スペースマシン」と「逆転世界」だけです。もっと読んだと思っていたのですが、出てきたのはこの二冊でした。以前に「逆転世界」で同じような後読感を味わったような気がします。しかし、遠い昔中学生のときの記憶なので定かではありません。そのような私でも十分に楽しめたので、過去作品を読まなくても大丈夫だと思います。ただし、長大です。読み終わるのに時間がかかりました、590頁ほどの二段組、そのうえ文芸大作のような趣なので最初は戸惑うかもしれませんが読んでみては如何でしょうか。第五部にたどり着ければ後は一気読みです。
是非読んでみてください。