このカテゴリー「天体物理学の基礎」は教科書を用意してその内容を理解するという取り組みをしていきたいと思います。用意する教科書は以下の3冊です。

・新天文学ライブラリー「ブラックホール天文学」 嶺重 慎著
・シリーズ現代の天文学
 「ブラックホールと高エネルギー現象」小山勝二・嶺重 慎[編]
・シリーズ<宇宙物理学の基礎>
 「ブラックホール 宇宙物理の基礎」小嶌康史・小出眞路・高橋労太著

主に「ブラックホール天文学」をベースに学んでいこうと思います。

ここに掲載することは、教科書を私なりに考え理解したことを記述しています。独学(微分積分、微分方程式なども全く覚えていないので再学習中です。ははっ)なのでかなり時間がかかると思います。

ブラックホール天文学 – 第二章から始めます。以前のコンテンツとかぶるかもしれませんが、よろしくお願いします。

    ◆

・降着流の基本である球対称について

どこまでも一様な密度のガスの中に高密度天体を置いた場合の現象を考察します。
高密度天体が作り出す球対称の重力場\(-\frac {GM} r\)に従ってガスが落ちていくとします。Mは高密度天体の質量、rは高密度天体からの距離とします。ここで\(ρ_∞\)(密度がどこまでも一様と解釈)としたときガスの降着率はどうなるのかを考えます。

  

この問題はボンディというひとが考えたものです。

基本式は二つあります。

式1)

連続の式
\(-4πr^2ρv_r = \dot M = 一定\)
\(\dot M\)はガス降着率(kg/s)、ρは半径rでの密度(Kg/m^3)、\( v_r \)(m/s) < 0 はガスの降着速度。

 

式2)

運動方程式
\( v_r \frac{dv_r}{ dr} = -\frac{1}{ρ}・\frac{dP}{dr} – \frac{GM} {r^2}\)
運動方程式です。境界条件は無限遠にて、\(v_r = 0、ρ = ρ_∞\)です。
この方程式の両辺を積分(無限遠から)します。ここで、ガスは等温とし、音速は\(c_∞\)(どこまで行っても同じ)とします。 圧力と密度の間に P = \(ρc^2_∞\) が成り立つと仮定します。
こう定義して積分を解いてみます。

※ \(-\frac{1}{ρ}・\frac{dP}{dr} \) この式は静水圧平衡の式から導かれます。以下を参照ください。

 

式3)

\(v_r dv_r + \frac{1}{ρ}・\frac{dP}{dr}dr + \frac{GM} {r^2}dr = 0\)

上式の第1項と第3項を積分します。
\(\frac{v^2_r}{2} + \int \frac{1}{ρ}\frac{dp}{dr}dr – \frac{GM}{r}\) = 0

そして第2項を積分します。\(p = ρc^2_∞\)を使います。
\(\int^r_∞ \frac{1}{ρ}\frac{dp}{dr}dr = c^2_∞\int^r_∞\frac{dρ}{ρ} = c^2_∞(\ln(ρ) – \ln(ρ_∞)) = c^2_∞\ln(\frac{ρ}{ρ_∞})\)

まとめると以下のようになります。
a)
\(\frac{v^2_r}{2} + c^2_∞\ln(\frac{ρ}{ρ_∞}) – \frac{GM}{r}\) = 0

  

ここで、長さの次元を持つボンディ半径を定義します。

式4)

\(r_B \equiv \frac{GM}{c^2_∞}\)

この式は重力エネルギーと熱エネルギーが平衡する半径を示していて、降着が本格的にはじまる半径です。

 更に、以下の無次元式を使って、求めた式を無次元化します。

式5) 

\(x \equiv \frac{r}{r_B}\)
\(u \equiv \frac{|v_r|}{C_∞}\)
\(α \equiv \frac{ρ}{ρ_∞}\)
\(λ \equiv \frac{\dot M}{(4πr^2ρ_∞c_∞)}\)

式1)と式3)のa) を上述の4つの無次元量を使って無次元化します。

以下のようになります。
式a) \(x^2αu = λ \)
式b) \(\frac{u^2}{2} + ln α – \frac{1}{x} = 0 \)

上式にて、式a)を\(α=\frac{λ}{x^2u}\)と変形して、式b)に代入します。
\(\frac{u^2}{2} + \ln(\frac{λ}{x^2u}) – \frac{1}{x} = 0 \)
\(\frac{u^2}{2} + \ln λ – \ln x^2 – \ln u – \frac{1}{x} = 0 \)
式c)
\(\frac{u^2}{2} – \ln u = -\ln λ + \frac{1}{x} + 2\ln x \)
ここで、左辺をuで右辺をxでそれぞれ微分します。
式d)
\(\frac{d}{du} \frac{u^2}{2} – \ln u \)
\( = \frac{u^2 – 1}{u} \)
式e)
\(\frac{d}{dx} (-\ln λ + \frac{1}{x} + 2\ln x) \)
\( = \frac{2x – 1}{x^2} \)

この式d)と式e)から式6)を導きます。

式6)

\( \frac{du}{dx} = \frac{u}{x^2}\frac{2x-1}{u^2-1} \)

式6)の微分方程式から縦軸u(速度)、横軸x(距離)として解曲線を求めます。 \( \frac{du}{dx} \)は解曲線の傾きを現していて、式6)の右辺をみると、u = 1とx = \(\frac{1}{2}\)を境に符号が変わります。 例えば、\( x > \frac{1}{2} \) かつ u < 1 の領域 があります。このとき、\( \frac{du}{dx} \)の傾きがマイナスを表します。 これは、無限遠からゆっくりと(亜音速程度の速さで)中心天体へ落ちていくガスの流れを表します。中心天体に向かってガスが加速しながら落ちてゆくことを示しています。
λ値前半の速度後半の速度備考
1)\(λ > λ_c\)亜音速超音速同じ半径で二つの速度を持つ
2)\(λ < λ_c\)亜音速亜音速密度無限大に発散
3)\(λ = λ_c\)亜音速超音速遷音速の解
表1 球対称降着の3つの解
\(λ_c\)は式5)のc)において、\( x = \frac{1}{2} \)とu = 1を代入することで得られます。

\(\ln λ_c = -\frac{u^2}{2} + \ln u +\frac{1}{x} +2\ln x\)
式7)
\(λ_c = e^{(-\frac{u^2}{2} +\ln u +\frac{1}{x} +2\ln x)}\)
変形した式に値を代入します。
\(λ_c = e^{(-\frac{1^2}{2} +\ln 1 +\frac{1}{\frac{1}{2}} +2\ln 1)}\)
\(λ_c = e^{(\frac{3}{2} – 2\ln2)} = \frac{1}{4}e^{\frac{3}{2}}\)

\(λ_c = \frac{1}{4}e^\frac{3}{2} = 1.120\)

 

・ボンディ降着流の解について

  

式6と表1、図1を参考にガスの流れの振る舞いを質量降着率λで考えてみます。値により表1のように3つの選択肢があります。初期条件としては初速ゼロのガスが無限遠からゆくっくりと落ちてきてどのように振る舞うかをみていきます。
まず、臨界値を考えます。\(u = 1とx = \frac{1}{2}\)のときの臨界値は\(λ_c \)=1.120です。この\(λ_c\)より大きいか小さいかで考えます。

・\(λ_c\) > λ
λの値が\(λ_c\)よりも小さい場合は図1の右上隅の小さなオレンジ色のグラフを参照してください。このオレンジ色の部分が\(λ_c\) > λの領域です。無限遠からガスがやってきたと考えるならば、赤い丸で囲まれた領域が妥当です。そこでその領域の外周にあたる曲線がガスの軌跡にあたるとします。その曲線はすぐ下にある大きなオレンジ色の曲線でガスの軌跡を示しています。
しかし、距離xに対して速度が二つの値をとるので、ガスの運動を解析する上で問題です。従って、ボンディの解としては不適切です。

・\(λ_c\) < λ
λの値が\(λ_c\)よりも大きい場合は図1の中央下の小さな黄色いのグラフを参照してください。この黄色い部分が\(λ_c\) < λの領域です。無限遠からガスがやってきたと考えるならば、上側の黄色い領域では無限遠からガスが来たと考えると、大きな初速を持ったガスが速度を落としながら高密度天体にやってくるイメージなので条件に合いません。
そこで赤い丸に囲まれた領域の外周曲線を考えます。これは一見条件に合っているように見えますが、式1)で一定であるガス降着率\(\dot M\)に対して、距離x(半径r)が0に近づくほど保存則に従い密度ρが大きくなります。そのため半径がゼロの極限では密度が無限大になってしまいます。従って、ボンディ解としては不適切です。

・\(λ_c\) = λ(=1.120)
最後に残った解で、緑色の大きな曲線で表しているのがその曲線です。無限遠からやってきたガスが高密度天体に向かって落ちて行く解として妥当といえます。
上記解析の結果、ボンディ半径にある球対称のガスが音速で落ちてくるガス降着率は、式1)と式4)から、
\(\dot M = -4πr^2_Bρv_r = 4πλ_c(GM)^2ρ_∞/c_∞~3\)
となります。

・ボンディ降着流の特徴


具体的な値を代入して質量降着率を求めてみます。
星間物質の値
・電離水素ガス:\( ρ_∞ = 10^-23 kgm^-3 \)
・温度:\( T = 10^4K \)
・音速:\( c_∞ = 10km/s \)
・ブラックホールの質量:\(10M_skg\)
まず、ボンディ半径を求めてみます。
式4)から、
\( \frac{GM}{c^2_∞} = \frac{6.67×10^{-11}×10×1.99×10^{30}}{(10^4)^2}\)
= \( 1.33×10^{13} \)m 〜 90au (au:天文単位)
となります。また、質量降着率は、
\(\dot M = -4πr^2_Bρ_∞c_∞ = 2.12×10^8\)
これを質量を太陽質量に、秒を年に換算してみます。
〜 \(3.36 ×10^{-15}\) Ms/yr (Ms太陽質量)

降着流では光度はガス降着に比例します。高密度天体をブラックホールと考えると、その変換率は10%ぐらいです。(ガス降着の10%)
L 〜 \(η \dot Mc^2 \)から、〜\( 0.1\dot Mc^2 〜 1.91×10^{24} J/s \)
絶対等級で表すと、
\( M = 4.75 – \frac{5}{2}\log\frac{L}{L_s} = 5.54等級\)
あまり明るくないですね。

次に銀河中心の太陽質量400万倍のブラックホールで考えてみます。
ボンディ半径はブラックホール質量に比例するので、先ほど計算したものは太陽質量の10でしたから、それよりも40万倍大きくなるので、
\(r_B = 5×10^{18}m 〜 173×10^{2}pc(pc:パーセク) \)
質量降着流はブラックホール質量の2乗に比例するので1600億倍となり、
\( M = -4πr^2_Bρ_∞c_∞ = 4.8×10^{-4} M_s/Yr \)
光度は、\(L 〜 0.1\dot Mc^2 = 2.7×10^{35}J/s\)です。
かなり明るく活動銀河核並みですが、実際の銀河系中心のブラックホールはこれほど輝いていません。大量に降着したガスのエネルギーが「光る」ことに使われれば輝くはずですが、エネルギーはどこにいってしまったのでしょういか?

ガスが高密度天体に向かって落ちて行くと重力ポテンシャルエネルギーが解放されます。しかし、ボンディ降着流では解放されたエネルギーはほぼ運動エネルギーになってしまいます。輝くには放射エネルギーに変換される必要がありますが、ボンディ降着流のメカニズムにはその機構がないようです。
式3)をみてみると、
運動エネルギー → ガス運動エネルギー
であることがわかります。

   ◆

今回は以上です。

次回は「2. 円盤降着流の基本」を複数回に渡って勉強していきたいと思います。

arakata
masakappa@gmail.com

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