以下について見ていきます。
・宇宙ジェット
原始星ジェット、系内ジェット、活動銀河ジェット
・宇宙ジェットの特徴
SS433
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[宇宙ジェット]
高密度天体は物質を吸い込み輝くだけでなく、高速に物質を放出していることが明かになってきました。高速で吹き出している状態をアウトフローと呼んでいます。
宇宙ジェットは高密度天体の中心から双方向に吹き出す現象で絞られたアウトフローです。高密度天体や原始星で観測され、降着円盤により天体に物質が供給されジェットとして吹き出していると考えられています。
・原始星ジェット
星間分子雲の深部で生まれた原始星から双方向に吹き出す分子流は秒速十数kmの速度で宇宙空間に流れ出ています。
・系内ジェット
X線連星のブラックホール近傍から相対論的な速度で吹き出しています。
・活動銀河ジェット
100万光年もの長さにわたり銀河核から虚空に伸びていく相対論的な流れです。
それは宇宙ジェットが活動銀河で発見されたことに始まります。二十世紀の初め、おとめ座銀河団の中心に初めて「ジェット」が見つかります。第二次大戦後に電波干渉計が発明されて「電波ローブ」(二つ目玉電波源)が発見されました。そして、二十世紀後半に電波銀河の中心と電波ローブを結ぶ細い橋「電波ビーム(ジェット)」が発見され100万光年もの長さになる「活動銀河ジェット」の全容が明かになりました。
これを契機に多くのジェットがみつかりはじめ、銀河中心のX線源や系内ブラックホール天体でもジェットが見つかり、激変星、白色矮星などの近接連星系からも秒速3000kmから秒速5000kmのジェットが確認されました。ちなみに、銀河系内の高密度星を含む近接連星系から吹き出すジェットを「系内ジェット」と呼びます。
原始星でのジェットはミリ波COスペクトル観測によって発見されました。ガンマ線バーストは核実験観測衛星「VELA」により二十世紀中葉に発見されました。理由については明確ではありませんが、高温のプラズマがジェット状に吹き出しているのではないかと推測されています。
[宇宙ジェットの特徴]
様々な天体でジェット現象が起こっていますが、それらには共通する点が多くあります。SS433という連星が最初に発見されたマイクロクェーサーです。ジェットを構成しているものは水素ガスなどと観測されていて、これからジェット本体は電子と陽子イオンからなるプラズマと考えられています。SS433の主天体であるブラックホールからは光速の26%になるジェットが吹き出しており中程度の相対論的であるといわれています。
活動銀河においても光速の99%ぐらいと推定される超相対論的であるものもあり、ガンマー線バーストという天体においては光速の99.99%という極端に超相対論的であるものもあります。このような観測的な事実があるのですが説明が難しい現象と捉えられています。それを以下に三つあげます。
・加速度構造
宇宙ジェットが光速に迫るのも珍しくない。どのような機構でそこまで加速できるのかメカニズムがわかっていない。
・収束構造
宇宙ジェットはとても細長い形状をしている。例えとして『10kmにもなる水流の先端が100mぐらいしか広がらない』といわれているがその謎を解明する必要がある。
・エネルギーの源
重力エネルギーが関与していることは確実だがその機構を明確にする必要ある。
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次回は宇宙ジェットの機構について考えていきたいと思います。
以上、宇宙ジェットのはじめでした。