宇宙時代が来て星々を駆ける人類はどんな推進システムを使用しているのか考えるだけでワクワクしたころがありました。
今の技術で作れる最強な推進システムは、おそらくバサード・ラムジェット推進システムだと思います。推進に核融合を使うのでもう十年ほど時間が必要かもしれませんが。
このシステムの画期的なところは燃料を宇宙空間から取り入れるところです。宇宙に漂う水素を前方に広げた電磁ネットで取り入れて進みます。
これならば、どこまでも進み続けることが可能です。人間に優しい1G加速でどこまでも進めば、近隣の恒星系に乗組員の寿命内に着けることが可能でです。
では何万光年も先にある恒星系にはひとの寿命内でいけるのか。行けると思います。1G加速を続ければやがて相対論的なスピードになるので遥か彼方の星雲まで行くことは可能でしょう。しかし、地球では何十、何百、いや何万年も経っている可能性があります。懐かしい故郷は無くなっている可能性があります。
ちょっとコンビニ行ってくる的なのりで宇宙にいける時代は来るのでしょうか。
今回は、それに関するお話です。
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異星人とファーストコンタクトするロバート・ゼメキス監督の「コンタクト」という映画がありました。原作はカール・セーガンです。知っている人は知っている、知らない人は全く知らない天文科学者です。カール・セイガンは小説「コンタクト」のクライマックスで使用する異星人の技術について科学的な正当性を見てほしいと、友人である天文物理学者キップ・S・ソーンに頼みました。ソーンは2017年にノーベル物理学賞を授与された方です。
そこに出てくるものは、ブラックホールを使用して地球から26光年先の恒星ベガに転送されるというものでした。
ソーンは考えました。
ブラックホールは常に小さな真空の揺らぎと僅かではあるが放射を受けています。この揺らぎと放射がブラックホールに落ち込むと重力によって加速され莫大なエネルギーを得て、旅する宇宙船を破壊することになると思いました。
そこで考えたのはワームホールです。それならば「双方向」なので問題無く使用できるはずだと考えます。
ワームホールを安定して存在させるには、
・穴が閉じないように、重力的に押し広げておくものが必要
・穴から出ていくために出口の穴を押し広げるものが必要
この二点が有効であるには、エネルギー密度が負であるエキゾチック物質の存在が必要であると考えが至ります。
ソーンは、小説内でエキゾチック物質が存在してワームホールを使用できるようのに誰かに発見させるように提案しました。
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ではワームホール自体を誕生させるにはどうしたらよいのでしょうか。
・太古の超超超文明が残してくれたものを探しだす。当然メンテナンスも作成することもできない。
・そもそもつくることは可能なのか。トポロジー的に穴が空いていない宇宙に(ブラックホールは突き抜けていないと考えて)穴を開けることは可能なのか。
一つ目は、人類のステージが宇宙時代黎明期になったら探しに行くというスタンスです。多くの人類は「座して待つ」感じですね。さらに宇宙大航海時代になれば、人類みな宇宙飛行士として出かけて行き、見つけた人が大金持ちになれる。一攫千金の夢があります。
二つ目は、人類の技術で手に入れるというスタンスです。宇宙に穴を開けない方法として、今わかっていることはプランク長さ以下の領域では真空の揺らぎで時空はふつふつと泡立っていて、この泡はワームホールと同じ機能があるのでこれを使おうということです。後は、これを人類サイズにするか、または人類がこのサイズ(10^-33)になるかですね。
うむ、宇宙に探しに行く案も人類が作る案も、どちらも時間がかかりそうですね。
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ワームホールを直ぐには手に入れることはできないようですが、エキゾチック物質が作成できればよいなと思ってます。
エキゾチック物質に関しては、大きな重力の影響を受けない空間では、真空の揺らぎからはエキゾチックは認められないが、歪んだ時空では揺らぎによってエキゾチックであることは論理的に証明されています。
であるならば、ワームホールが生じる空間(歪んだ時空)では自ずとエキゾチック物質が作られるのではないかと期待をしています。
玄関の脇にトランスポーターがあり「ちょっとベガに行ってくる」時代はちょっと遠いようですが、300年後ぐらいには可能になっているかもしれないと思っています。
参考文献:「ブラックホールと時空の歪み」キップ・S・ソーン著