以下について考えていきます。
現在、降着円盤のモデルは3つあります。
・標準円盤モデル
・高温降着流モデル
・超臨界降着流モデル
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[標準円盤モデル]
ガス降着に伴って解放された重力エネルギーが放射エネルギーに変わり降着円盤が輝くモデルです。このモデルでは放射により温度が下がるので圧力が下がり、降着円盤は垂直方向に縮み幾何学的に薄なります。
このモデルは粘性項を入れたナビエ-ストークス方程式(※1)という式をベースにしたものを解いて得られたものです。これから導かれる標準円盤の特性は以下になります。
・回転軸に対して軸対称
・ガスは天体のまわりを高速で回転するので天体への降着は長くかかる
・降着円盤は薄い
・降着円盤は黒体放射をする
・重力エネルギーは効率よく放射エネルギーに変換される
※1:流体力学で使用される2階非線型偏微分方程式
[高温降着流モデル]
標準円盤モデルでは説明できない高エネルギー放射や激しい時間変動を説明するモデルとして出てきました。現在有望しされているモデルは放射が非効率な降着流モデルでRIAF(ライアフ)と呼ばれています。
このモデルは低密度のガス流の場合、放射があまり出ないのでガスは高温になります。高温になると粘性が上がり角運動量の輸送効率が上がり(角運動量を外向きに輸送することでガス降着がよくなります)降着速度が自由落下速度くらいまで大きくなります。そして重力エネルギーの解放により発生した熱はこの高速なガス流にのって中心天体へ運ばれていきます。
このモデルの特性は以下になります。
・回転軸に対して軸対称
・ガスは中心にむかって螺旋状に高速で落下していく
・降着円盤は回転軸方向に膨らむ
・重力エネルギーは主にガス内に溜められる
・降着円盤はシンクロトロン放射(※2)や逆コンプトン散乱(※3)などの様々な放射過程で輝く
※2:シンクロトロン放射
シンクロトロン放射とは円環状の加速器により磁界内で荷電粒子が光速に近い速度で円運動または螺旋運動するときに放射される電磁波のこと。
※3:逆コンプトン散乱
相対論的な速度で運動している電子と赤外線や可視光の波長の光子が衝突したときは, 電子のエネルギーの方が光子のエネルギーよりはるかに大きいので 電子が光子にエネルギーを与える。これはコンプトン散乱の逆になるのでこのように言われている。
[超臨界降着流モデル]
標準円盤モデルはエディントン限界光度(※4)近くの高光度で破綻します。降着率が高く光学的に厚くなります。その中で作られた光子は何度も吸収散乱を繰り返すのでなかなか円盤の外に出ていけません。そのため光子は降着ガスと一緒に高密度天体に飲み込まれてしまいます。このため重力エネルギーから放射エネルギーへの変換効率が悪くなります。
そこでこの光子補足効果を取り入れたスリム円盤モデルが提唱されました。モデルとしては高温降着流モデル(RIAF)に似ていますがそれほど高温にならず放射的には標準円盤モデルに近いものです。
降着円盤の光度が上がりエディントン限界光度に近づくと内側の半径(高密度天体と降着円盤の内側との距離)が見かけ上小さくなります。標準円盤モデルでは内側の半径は一定なので光度が上がると破綻していました。そこを上手く取り入れたモデルです。今後期待されているモデルです。
※4:エディントン限界光度
外側への放射圧と内側への重力とが釣り合う最大光度
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以上、降着円盤のモデルに関する雑学でした。