作成 2020/08/29
更新 2020/09/14

 

今回は粘性円盤の基本方程式を導出します。
 ・質量保存の式
 ・角運動量保存の式
この2式を求めます。
そして最後に拡張型方程式を導きます。

   ◆
 

・基本方程式

動径方向の基本方程式を求めます。
半径rにある幅Δrのリングを考えます。リング面に垂直方向の積分を面密度∑と定義します。
Σ = \( \int_{-∞}^{+∞} ρdz \) 

 

面密度∑を用いるとリング質量は、2πrΔr∑
角運動量は、\( 2πrΔr∑・r^2Ω \)
となります。

 

・質量保存の式
リング質量の時間変化は、リングに単位時間に入ってくる質量から出ていく質量を引くことで求まります。左辺が時間変化、右辺が単位時間あたりの質量になります。

\( \frac {∂} {∂t} (2πrΔrΣ) = (-v_r2πrΔrΣ)_{r+Δr} – (-v_r2πrΔrΣ)_r \)
\( = (\dot{M})_{r+Δr} – (\dot{M})_{r} \cong Δr \frac{ ∂\dot{M} } {∂r } \)

両辺を2πrで割ると以下の式が得られます。
\( \frac {∂Σ} {∂t} = \frac {1} {2πr} \frac {∂\dot{M} } {∂r} \) ・・・(1)
(Σ:面密度\( \int_{-∞}^{+∞} ρdz) \)

求まったこの式から言えることは、ガスの流れが一様でないときは面密度が変化することを示しています。

・角運動量保存の式
リングの角運動量の時間変化は以下のことと同等です。
リングに単位時間あたりにガスが持ち込んだ角運動量から持ち去られた角運動量を引きます。更にトルクによる角運動量輸送を加えます。

\( \frac {∂} {∂t} (2πrΔrΣ・r^2Ω ) \)

\( = – (-v_r2πrΣ・r^2Ω )_{r+Δr} + (-v_r2πrΣ・r^2Ω )_{r} + \frac {∂G} {∂r} Δr \)

\( ( G = 2πr・νΣr^2\frac {∂Ω} {∂t}) \) ・・・(2)
この式は前回の「ブラックホールはなぜ光る?その2」でトルクとして求めています。

\( = – (-v_r2πΣ・r^3Ω )_{r+Δr} + (-v_r2πΣ・r^3Ω )_{r} + \frac {∂G} {∂r} Δr \)

\( = – (-v_r2πΣ・(r+Δr)^3Ω ) + (-v_r2πΣ・r^3Ω ) + \frac {∂G} {∂r} Δr \)

式を展開して整理します。

\( \cong – (-v_r2πΣ・3r^2ΔrΩ ) + \frac {∂G} {∂r} Δr \)

\( = – (-v_r2πΣ・\frac {∂} {∂r} r^3ΔrΩ ) + \frac {∂G} {∂r} Δr \)

\( = – \frac {∂} {∂r} (-v_r2πrΣ・r^2ΔrΩ ) + \frac {∂G} {∂r} Δr \)

Δrで割ります。

\( = – \frac {∂} {∂r}(\dot{M}・r^2Ω) + \frac {∂G} {∂r} \)
\( ( \dot{M} = -v_r2πrΣ ) \)

下記のようになります。

\( \dot{M} \frac {d(r^2Ω)} {dr} = – \frac {∂G } {∂r} \) ・・・(3)

式(1)、(2)、(3)から時間1階微分、空間2階微分の拡散型方程式を求めます。
このとき、ケプラー回転として \( Ω \propto r^ {- \frac { 3 } {2} } \) とします。
\( \frac {∂Σ} {∂t} = \frac {1} {2πr} \frac {∂\dot{M} } {∂r} \)

※拡散型方程式とは
 『拡散が生じている物質または物理量(拡散物質)の密度の揺らぎを記述する偏微分方程式』です。基本式は以下のとおりです。
  \( \frac {∂φ} {∂t} = D∇^2φ(\overrightarrow{r} , t) \)
 
(3)式から、
\( \dot{M} \frac {d(r^2Ω)} {dr} = – \frac {∂G } {∂r} \)

\( \dot{M} = – \frac { \frac {∂G } {∂r} } { \frac {d(r^2Ω)} {dr} } \)

分子部分を計算します。
\( G = 2πrνΣr^2 \frac {d(Ω)} {dr} \) より、

\( \frac {∂G } {∂r} = \frac {d} {dr} 2πνΣr^3 \frac {d(Ω)} {dr} = \frac {d} {dr} 2πνΣ\frac {dr^3(Ω)} {dr} \)

\( = \frac {d} {dr} 2πνΣ\frac {dr^3 r^{ – \frac { 3 } {2} } } {dr} = \frac {d} {dr} 2πνΣ\frac {dr^\frac { 3 } {2} } {dr} \)

\( = \frac {d} {dr} 2πνΣ \frac {3} {2} r^{\frac {1} {2}} = \frac {d} {dr} 2π \frac {3} {2} ( \sqrt {r}νΣ ) \) ・・・(4)

分母部分を計算します。

\( \frac {d(r^2Ω)} {dr} = \frac {d(r^2 r^{ – \frac {3}{2} })} {dr} = \frac {d r^{ \frac {1}{2} } } {dr} = \frac {1}{2} r^{ – \frac {1}{2}} \)・・・(5)

(4)、(5)より

\( \dot{M} = \frac {(4)} {(5)} = \frac {2π \frac {3} {2} \frac {d} {dr} ( \sqrt {r}νΣ ) } { \frac {1} {2} r^{ – \frac {1}{2} } } = 2π 3 [\sqrt {r} \frac {∂}{∂r} \sqrt {r}νΣ ]\)

\( \dot{M} \) を(1)に代入します。

\( \frac {∂Σ} {∂t} = \frac {1} {2πr} {2π 3 \frac {∂}{∂r} [\sqrt {r} \frac {∂}{∂r} \sqrt {r}νΣ ]} \)

\( = \frac {3} {r} {\frac {∂}{∂r} [\sqrt {r} \frac {∂}{∂r} \sqrt {r}νΣ ]} \)

拡散型方程式が求まりました。

    ◆
 

次回はいよいよ今回求めた拡散型方程式より解を求めます。
(解を求めるには、今の自分の実力では難しい、、、)










arakata
masakappa@gmail.com

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