著者 劉 慈欣 (リュウ ジキン)
翻訳 大森望/光吉さくら/ワン・チャイ
出版社 早川書房
翻訳出版 電子書籍版 2019年7月15日
あらすじ
文化大革命で非業の死を遂げた父親を見て、心に傷を負った葉文潔は紅岸基地で人生を終えるつもりでそこに引き籠もった。それから四十数年後、<科学フロンティア>という学術組織に関することで汪森は警察の会議に出席することを頼まれる。その会議で<科学フロンティア>で謎の自殺が続いており、その謎を解明するために組織への潜入を依頼される。
潜入依頼を引き受けた汪森の身辺で奇妙なことが起こり始める。
感想
少々ネタバレしています。
(なるべく短く感想を述べています)
これから読むんだよという方は、ここでお戻りください。
中国SFということで、文化大革命が出てくるのではと恐れていたらオープニングでいきなりです。ポリティカルフィクションは苦手なんだよなと思っていると、キング、クーンツ、いや日本のホラー映画のような様相を呈してきて、さらに「リング」三部作のオチのように妙にリアルな V R 三体世界へと誘われて行きます。ここまででまだ1/3程度しか読んでません。
そして、信じてきたことが脆くも打ち壊されたとき人はどうなるのか、環境問題をめぐってレイチェル・カーソンの「沈黙の春」の挿話があったり、更に恒星をそんな使い方をするのか、智子(ソフォン)凄いな、とか最後まで息をつく暇もなく怒濤の展開です。
これ纏められるのかと不安になりますが、見事に伏線を回収しまくります。驚くのはこれからというところで「三体Ⅱ 黒暗森林」へとなります。それが不満かといえばそのような事はなく、お腹いっぱいでこれ以上は無理と思っていると「つづく」です。
中国SFは文学的な感じで読みづらいと勝手に思っていましたが、よい意味で見事に裏切られました。これからは中国SFもウオッチしていきたいと思います。
とりあえず「三体Ⅱ 黒暗森林」を読みます。
中国が生んだ大作「三体」、そのインパクトは個人的には「時間封鎖」、いや「ハイペリオン」、いやいや「星を継ぐもの」なみだと思います。
ぜひ読んでみてください。