[最終更新日]2020.04.23
降着円盤を持つ天体の光度はエディントン光度という限界光度を超えることはできません。
エディントン限界光度といっていますが、エディントンの仕事ではなく、エディントンがはじめて放射圧の重要性を説いたので名前がついています。
[概要]
降着円盤を持つ天体は程度の差はありますが輝いています。輝くには電磁波(電波、可視光、X線など)を放射している訳ですが、この放射は天体の周りから中心に落ちてくるガスに対して、圧力を及ぼします。これを放射力といいます。
天体は放射力と重力のバランスで輝いています。放射圧は光度に比例するので、ガス降着可能な天体には光度の限界があります。
エディントン限界光度を超えると降着しようとしているガスは吹き飛ばされ、限界光度以下ならガスは降着し天体は輝きます。
[導出]
外向きの光子の圧力と内向きの重力が釣り合う状態を考えていきます。
中心天体の光度をLとすると単位時間あたりのエネルギー放出と同じと考えると
dE / dt = L
となります。
光子エネルギーは運動量Pから
P = E / c
従って、
dP/dt = dE/dt×1/c = L/c
となります。
天体の中心から距離rでの光子圧力は、単位体積あたりの運動量の放出と同じと考えられるので、
P = 1/(4πr^2) ×dp/dt = L/(4πcr^2)
となります。
ここで吸収係数kを導入して、外向きの力は光子圧力なので
((式1))
f rad = kL/(4πcr^2)
これに対して内向きの力は重力になるので
((式2))
f grav = GM/r^2
となります。
f rad <= f grav
から、
kL/(4πcr^2) <= GM/r^2
L edd <= 4πcGM/k (Ledd : エディントン限界光度)
となります。
エディントン限界光度を求めてみます。
c = 3 × 10^8 m/s
G = 6.67 × 10^-11 m^3 kg^-1 sec^-2
Ms = 1.99 × 10^30 kg
k = 4.0 × 10^-1 cm^2g^-1
L 〜 (4πcGM)/k = 1.25 × 10^38 [erg s^-1]
これより、
L edd ~ 1.25 × 10^38 (M/Ms) [erg s^-1] (Ms:太陽質量)
となります。
限界光度以下ならガスは降着し天体は輝きます。
◆
エディントンに関しては、よろしければこちらも御覧ください。
以上、エディントン限界光度のマイルドな話でした。