以下について見ていきます。
・中性子星連星系
大質量X線連星、小質量X線連星
・X線パルサー
・X線バースト
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銀河系にはX線を発する天体が数百個存在します。多くが中性子星と恒星の近接連星系になります。そのメカニズムは白色矮星と同じですが物質の降着により重力エネルギーが解放されてX線を放射します。
[中性子星連星系]
中性子星連星系から放射されるX線は膨大なエネルギーを持っています。放射は短時間(一ミリ秒以下)で変動することがあります。それから放射源のサイズを予測すると 光速 × 一ミリ秒 → 300km と求まり、サイズは300km以下と予測されます。
伴星からのガスは中性子星に捕えられ重力で加速されます。ガスが中性子星表面まで落下するときに(例えばガス内の陽子が落下するとすれば)発生する運動エネルギーは約100MeVと試算されており、これは水素が核融合で核子1個当たり解放されるエネルギーの7MeVを遥かに凌いでいます。
中性子星から放射された光子は降着円盤のガスの電子に散乱されることでガスに外向きの力を与え、これに対して中性子星の重力がガスに対して内向きの力を与えます。このように放射の圧力(光子によるもの)と重力が釣り合うときの光度をエディントン限界光度と呼びます。これは汎用的な現象で星はエディントン限界光度を越えて光ることはできせん。
中性子星連星系は伴星の質量により二つに大別されます。
一つは大質量X線連星で、伴星は太陽質量の10倍以上のOB型星です。OB型星の年齢は10^7年以下なのでこの連星は若い種族になります。
もう一つは伴星が暗くて見えないほど小さく太陽質量以下で、これを小質量X線連星といいます。この小質量の星の年齢は(5-10)×10^9年と古い種族になります。
[X線パルサー]
大質量X線連星はX線強度が周期的に変動するX線パルサーになります。周期はミリ秒から十数分の範囲です。中性子星はとても強く磁化しておりそのオーダーは10^8Tです。
降着ガスは円を描きながら中性子星に流れ込みます。このとき磁場の圧力がガスの圧力と釣り合うところでガスは堰き止められ、そのガスは磁力線に沿って移動し両磁極に流れ込みます。そして磁極に落ちた物質は加熱されてX線を放射します。磁極が中性子星の回転軸に対して傾いている場合は、星の回転と共に磁極も回転するので遠くにある観測点から眺めると見えたり隠れたりします。これがパルスの正体です。
[X線バースト]
少量X線連星系では中性子星に降着円盤ができます。円盤は中性子星の表面近くまで届き、中性子星に近づくほど温度が高くなります。降着したガスは重力エネルギーの半分を黒体放射として解放しています。そしてガスが中性子星の表面に降着すると残りのエネルギーが解放されて黒体放射でX線を放射します。この解釈により少量X線連星系のスペクトルが二つの黒体放射で説明できました。
少量X線連星系には特有な現象としてX線バーストがあります。数秒から数十秒の間X線で爆発的に輝く現象です。バーストの間隔は数時間~一日です。バーストのスペクトルは黒体放射のスペクトルに合い、黒体の温度はバーストのピークで10^7Kに達してX線の強度が下がるに連れて温度も下がります。一回のバーストで放出されるエネルギーは10^32Jに及びます。
X線バーストの原因は降着円盤での現象ではなく中性子星の表面で起きる熱核融合反応です。この反応により大量の熱が瞬時に発生してこれに表面からX線が放射されます。これがバーストの要因です。
熱核融合は水素燃焼(4H→He)→ヘルウム燃焼(3He→C)となります。核融合反応で核子1個当たり解放されるエネルギーは1MeVになます。一回のバーストで放出されるエネルギー10^32JをMeVに変換すると6.24×10^43MeVとなり、これに1Kgが5.6 × 10^28MeVなので割ると、観測されたX線バーストのエネルギー量から1回のバーストで約10^15kgの降着物が燃焼したことになります。
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以上が質量降着と中性子星に関するお話でした。