以下について考えていきます。
・恒星質量ブラックホール
・大質量ブラックホール
・中質量ブラックホール
・ブラックホールの観測方法
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ブラックホールには大別すると、恒星ブラックホールと大質量ブラックホール、中質量ブラックホールが存在します。
・恒星質量ブラックホール
主系列星で10-20Ms(Ms:太陽質量)の恒星の場合、このような大質量の恒星が進化の後に重力崩壊を起こすと超新星爆発となりほとんどの外層部は吹き飛ばされます。その中心核に2~3Ms未満の物質が残ったときは中性子星となりますが、それを超える質量が残った場合はブラックホールとなります。また、20Ms以上の場合は確実にブラックホールになります。そしてブラックホール化する質量はだいたい5-15Ms程度です。
このような生成過程を経たブラックホールを恒星質量ブラックホールといいます。
ブラックホールが単体で存在する場合、発見することは不可能といわれています。“見る”ことが出来ないからです。
例えば恒星と連星系をなすブラックホールがある場合、ペアーである恒星からガスがブラックホールに降着する場合は重力エネルギーの解放でX線放射を行うかもしれないので、これを観測できればブラックホールを間接的に“見る”ことができます。
・大質量ブラックホール
銀河の中止には巨大なブラックホールが存在することが明らかになってきました。ここで天文の歴史を少し振り返りたいと思います。
1960年代に点状の星に見えるが恒星とは異なるクェーサーと呼ばれる天体が発見されました。異なるとは、その光スペクトルが恒星と異なり正体が不明の強い輝線がいくつも観測されたためです。調査や議論により、輝線は水素原子のバルマー系列線が赤方偏移したものだとわかりました。この赤方偏移は宇宙膨張に伴うもので、クェーサーは遥か彼方にありその放射光度は莫大なものとわかりました。
これとは別にセイファートという人物が銀河系近傍の銀河を観測して、可視光分光を行い強い輝線を示す銀河系群を見つけました。現在この銀河群をセイファード銀河と呼びます。このセイファード銀河の中心には強い星状の中心核を持つことがわかり、また前述のクェーサーはその周囲に銀河のような形状を見せていることがわかりました。従ってこの二つの天体は銀河のように見えるので合わせて活動銀河といわれるようになりその中心核を活動銀河核といいます。
活動銀河核は光だけでなく、電波やX線、ガンマ線などを放射しています。この活動銀河核の正体は10^6-9Msの大質量を持つブラックホールが周囲からガスを降着したことで起きる現象と解釈され、セイファード銀河やクェーサーの現象がそうであるとわかりました。
・中質量ブラックホール
近傍銀河系内に非常に強いX線を出す天体が観測されていました。このX線源の光度はとてつもない明るさで10^32.5-33.5Wです。このような光度の天体は恒星質量ブラックホールよりは十分大きく大質量ブラックホールよりは小さい質量をもつブラックホールと考えられています。このブラックホールを中質量ブラックホールといいます。
若い大質量星団(若い巨星の集団)は恒星同士が高い密度のために暴走的に合体して通常には出来ない大きな質量(太陽の数百倍)の星が作られる可能性があります。この星が重力崩壊を起こして中質量ブラックホールとなるのがシナリオのようです。
暴走的に:秒速30キロメートル以上で移動する星(runaway star)の状態
・ブラックホールの観測方法
ブラックホールは直接的に観測できないので研究方法として以下の4つのやり方があります。
1)事象の地平面の外側で解放される重力エネルギーの一部がX線などの電磁波で放射させることを観測してブラックホールを特定する。
2)放射されるX線の光度やスペクトルから中性子星と区別してその質量を推定してブラックホールを導き出す。
3)連星系の天体の運動を観察してその対の天体の大きさ(重さ)が十分に大きな質量であることを観測する。
4)一般相対性理論的な効果を観測する。
3)に関しては恒星質量ブラックホールや大質量ブラックホールで述べた方法で観測することでブラックホールを特定できます。 1)と2)は近接連星からの物質の流入による降着円盤の形成と活動から、白色矮星や中性子星と区別し特定することで可能です。4)に関してはこれからのようです。
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ブラックホールの雑学でした。