前回は事象の地平面の外周を求めてみました。このとき半径の伸びについて簡単に話しましたが、もう一度詳しくみてみようと思います。更に求めた外周を用いて潮汐作用についても調べてみます。
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[動径方向の伸び]
始める前に少し細工をしてみようと思います。
今回はG(重力定数)とc(光速)とM(質量)を長さで表すことにします。
G / c^2 = 7.424 × 10^-28 ( m / kg)
これに、質量をかけるとメートルの単位になります。
では太陽質量をかけてみます。
Ms :1.99 × 10^30 kg
M = 1.477 × 10^3 メートル
となります。これを使用して計算をしてみます。
以前にシュバルツシルト計量に少し触れました。
下のシュバルツシルト計量ですが、2項目は距離に関する項です。この項を使用して、ブラックホール近傍では動径方向の長さが伸びることを示します。
1太陽質量ブラックホールのシュバルツシルト半径は3kmです。
ここで半径が5kmから4kmまでの間隔の長さがどうなるかみてみます。ブラックホールの影響がない場所では5kmから4kmの間隔は1kmですね。
r1 = 4km、r2 = 5km、M = 1.477 × 10^3 m
積分してr1とr2の数値について解きます。
あと、r = z^2 とします。
= 1.74 km
0.74kmも伸びています。
従って、半径は直接求めるのではなく、ブラックホールの外周から求めるのがベターなのようです。
[潮汐作用]
前回、事象の地平面の外周が出せたので、それを使って潮汐作用を見てみたいと思います。
潮汐作用のについては以下の式で求めることができます。
Δa = (16π^3×G×L×Mh) / C^3
G : 6.67 × 10^-11 重力定数
L :1.6 m 人間の身長
Mh :1.99 × 10^30 太陽質量
C :1.85 × 10^4 1太陽質量BHの外周の長さ(事象の地平面の外周)
(16π^3GLMh) / C^3
= 1.66 × 10^10 m/s^2
この値をg(9.81 m/s^2)で割りと体(頭と爪先の間)に何Gかかっているかを算出すると、
1.7 × 10^9 G
とてつもないGがかかっています。
軌道の外周といても事象の地平面の外周と同じなので凄い力がかかりるわけです。そこで、少し上の軌道へ行ってみましょう。
外周を100倍して1.85 × 10^6 m として計算すると
1.7 × 10^3 G
体(頭と爪先の間)に1700G
これでもやばそうです。
これで事象の地平面から約300km離れています。
今度は外周を1000倍して1.85 × 10^7 m として計算すると
16.9G
訓練を受けた人でも気絶しそうな気がします。
事象の地平面から約3000km離れていますがもう少し離れる必要があるようです。おそらく、外周を1万倍したところなら安全そうですね。
半径3kmのブラックホールでもかなり離れて観測する必要があるようです。
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動径方向の伸びと潮汐力についてでした。