以前に降着円盤について話しましたが、今回はもう少し詳しく考えていきたいと思います。
この回は
の続きになります。
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[粘性]
円盤降着では球対称降着とは異なり、いかに光を放射するかを考えます。
それは、円運動をしながら落ちていけばなんらかの変換過程が得られるのではと考えられるからです。
それは、角運動量と粘性です。
ブラックホールを中心天体として、ガスの軌道運動をみてみます。ケプラーの法則から点ポテンシャル(- GM/r)周りの質点は楕円運動を行います。角運動量がガスに与えられたとき、最も安定した運動は円運動です。
円運動では常に重力と遠心力が釣り合っています。
ケプラーの法則を振り返って以下の式から、
(円運動なので動径方向の変化はないので左辺一項目rの二回微分は0)
式1))
M/r^2 = rω^2 = h^2/r^3
となります。
式1を変形します。
式2))
GM/r^2 = h^2/r^3
r^3/r^2 = h^2/GM
r= h^2/GM
ガスは角運動量の値によって決定される半径rの円軌道上を運動します。
ガスが落ちていこうにも遠心力で落下できない状況になります。
そこに出てくるのが粘性です。
粘性には二つの重要な働きがあります。
・角運動量の輸送:粘性によるガス降着
・摩擦熱の発生 :粘性によるガスの温度上昇、熱せられたガスからの放射
エネルギー変換の状態は、
重量エネルギー → 熱エネルギー → 放射エネルギー
となります。
放射の鍵は粘性にあるようです。
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[平行シアー流]
平行シアー流とは、直線境界を隔てて二つの速度の異なる状況を言います。
下図に見るように、上側が遅い流れ(vd)、下側が早い流れ(vu)とします。
境界で粘性が働くと摩擦力が発生します。摩擦は、例えば質量mの物体に力Fが働くと加速度αが発生します。(ニュートンの第2法則)
α= F、α ≡ d^2 x/dt^2
また運動量がPが変化するとも考えられます。
ΔP / Δt = F、p ≡ m・dx / dt
摩擦が働いた結果、速い流れでは運動量を失い、遅い流れでは運動量が増えたことになります。この系の全体では運動量は保存されるので、運動量は速い流れから遅い流れと輸送されたことになります。
では回転流についてみてみましょう。
円周境界の外側に遅い流れ(vd)、内側に速い流れ(vu)があるとします。
ケプラー回転の場合、遠心力と中心重力が釣り合うので((式1))から、
式3))
速度vφ = √GM/r と 角速度ω = √GM/r^3は内側ほど大きく
式4))
角運動量 l = √GMr は外側ほど大きい
となります。
ここで粘性が働くとどうなるのでしょうか。
回転流なので、力の代わりにトルク、運動量の代わりに角運動量を考えます。質量mの物体にトルク r × F が働くと角運動量 r × Pが変化します。
Δ(r × P) / Δt = r × F
角運動量が速い流れから遅い流れに輸送される(外向きに移動する)。そして、角運動量を得たその外側の流れは、((式2))に従い、円軌道半径は増加します。半径が増加すると速度は減少します。
このような差動円盤では、粘性の働きは、速度差を平すのではなく、速度差を増やす方向に働きます。
つまり、
ガス => 内向きに降着
角運動量 => 外向きに輸送
大部分のガスは角運動量を失い内側に移動してガスの降着を行います。
一方、角運動量は少量のガスにより外向きに輸送されて、円盤は広がっていきます。
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次回からは更に降着流の考察を深めていきたいと思います。