以前の解説で静水圧平衡について簡単に解説しましたが、これについてもう少し詳しくお話したいと思います。
天体のほとんどは、物質の四つの状態を持った構造物といえます。四つの状態とは、個体、液体、気体、プラズマです。このうち、天体のダイナミズムに関わる液体、気体、プラズマは外部からの作用に容易に変形、圧縮されるなど共通項が少なくないと思われます。このようなものを宇宙に存在する流体と考えて宇宙流体といいます。
宇宙流体においては、
・様々な機構でいろいろな電磁放射をおこなうこと。
・電磁場の影響を大きく受けること。
・作用するものとしてとても重要なのは重力。
・圧縮が効きこと。(何十万、何千万倍もの密度になりうる)
・場合によっては相対論的な状態を生み出す。
など、通常の気体と異なる現象を生み出します。
流体力学では、質点の力学と異なり質点を一点一点追うことは不可能なので、流体要素という概念で考えていきます。質点では物理量の属性は質点と電荷程度でしたが、流体では密度、温度、圧力があります。
流体には圧力があるので流体要素にはそれに起因する力が働きます。圧力が生み出されるには圧力の差が必要です。圧力差を考えるために、ある流体が重力圏にあるとして考えます。流体内に小さな円柱を考え、その円柱内の力の釣り合いを見てみます。
周辺の流体から円柱の周囲にかかる圧力と円柱の重心に働く重力を考えます。このうち水平方向の力は圧力のみで、それは対称性から釣り合っているとします。垂直に関しては圧力と重力がかかっています。
図を参考に解説をしていきます。
円柱内にとった仮想円柱の断面積をA、厚さをdz、仮想円柱の下面にかかける圧力をP、上面にかかる圧力をP+dPとします。このとき、円柱の流体は下方ほど圧縮されているのでdP<0となります。また、仮想円柱の密度は円柱が非常に薄いとするので密度ρは一定です。そして、円柱に下向きに働く重力加速度をgとします。
これらの条件をまとめると以下のようになります。このとき上向きの力を+、下向きを-とします。
円柱の上面での全圧力(下向き) - (P + dP) A
円柱の下面での全圧力(上向き) PA
重心に働く重力(下向き) -ρg Adz
従って、-dP – ρg dz = 0
これを変形するとよく見る微分方程式になります。
右辺は重力加速度で、左辺は圧力による力です。(単位質量あたりの圧力)
ただし、圧力そのものではなく圧力の勾配による力です。これを圧力勾配と呼びます。圧力勾配は圧力の高いところから低いところに向かう力になります。
流体に働く重力や圧力勾配力が釣り合い、流体が重力場のもとで静止している状態を、静水圧平衡と呼びます。
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以上、静水圧平行の式を導いてみました。