SS433はとてもユニークな天体で多くの天文学者の研究対象となっています。その全容は解明されていません。
例えば、中心に鎮座する天体が中性子星かブラックホールなのか。また、降着円盤の形状やジェットの加速機構など、分からないことが沢山あります。
多くの天文学者の視線を集める天体SS433ですが、脚光を浴びたのは1987年の暮れ当時の西ドイツで開かれたシンポジュームでのことでした。
ブルース・マーゴンという天文学者がSS433という天体の奇妙な振る舞いについて発表しました。その衝撃は世界中の天文学者の間に広がりました。
このSS433ですがその名前の由来は、オハイオ州の大学にいたステファンソンとサンドゥリークが輝線星のカタログを出版していて、その中に「Hα(エイチィアルファ)輝線」を示す455個の星がリストされていました。
Hα輝線とは水素原子が「第3励起状態」から「第2励起状態」に遷移するときに放射する光です(656.3ナノメートルの波長の光です)
身近な星として太陽がありますが、太陽の内部から放射される光は連続光で、太陽内に存在する原子によって吸収され「フラウンホーファー線」という吸収スペクトルとして現れます。多くの星は吸収スペクトルのみで輝線スペクトルは珍しい現象でした。
先程紹介した輝線星カタログの433番目にSS433が載っていることで世界中からこのカタログが注目を集めることになるのです。因みにSSの由来はステファンソンとサンドゥリークの頭文字Sからきてます。
SS433のスペクトルは連続スペクトル中に沢山の輝線と幾らかの吸収線をみとめることができます。輝線Hα、Hβ、Hγはバルマー系列の輝線で、He IやHe IIなどの吸収線を同定できましたが、正体不明の輝線がありました。その未知のスペクトルはスペクトル図上を右へ左へと動くのです。
最初、この件について多くの天文学者はドップラー効果だと考えました。ガスが私たちに近づけば青方偏移、遠ざかれば赤方偏移です。しかし、問題はその偏移量でした。そのスピードは光速の10%です。これだと観測している天体の場所がどんどんとズレていきそうですが、そうにはなっていません。そう考えるとドップラー効果案は取り下げる必要がありました。
赤方偏移の他にも162日間という周期性がありました。二つ輝線を追いかけると輝線たちは共に162日かけてグルグルと回っていたのです。
やがてこの答えとして「運動学的モデル」と呼ばれる解釈案が出てきました。SS433は中心天体から双方向にジェットが吹き出しており、この二つ(上と下)ジェットが地球に近付いたり離れたりする162日周期の歳差運動をするというモデルです。
SS433の全容はまだはっきりとはしていませんが、現在の情報から見えてくるSS433の姿は以下の通りです。
・伴星はA型超巨星で主星はブラックホールまたは中性子星のコンパクト星からなる近接連接系
・伴星のガスはロッシュローブを満たしてコンパクト星との接点(ラグラジュポイント)を越えてコンパクト星に流れ込んでいる思われる。
・コンパクト星の周りには降着円盤ができている。その形状は幾何学的に厚い(厚みと半径の比は1:2ととても分厚い)。この厚みのを生み出す機構はわかっていない。
・コンパクト星の上下から吹き出すジェットは光速の26%まで加速されており、それはとても細く絞られておりどのような機構でそのような状態になるかはわかっていない。
SS433はとても有名で多くの研究機関や大学で日夜調べられていますが、その全容はまだ明かになっていません。
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今回はSS433について調べてみました。もう少し知識がついたらまたSS433について語りたいと思います。
以上、SS433についてでした。