以下について見ていきます。
ブラックホール連星系や活動銀河核からは相対論的なジェットが吹き出しています。そのジェットの物理的な性質を観測事実から見ていきます。
・超光速運動
ジェットの速度が光速を超える?
・相対論的ビーミング
放射の強度が強くなる現象
・電波ローブ
相対論的ジェットによる創出される目玉
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[超光速運動]
超光速運動とは、中心核近くのジェットの電波構造体が光速以上の速さで中心核から遠ざかって運動しているように見える現象です。それは見かけ上の現象で、実際に光速以上で動いているわけではありません。
これは、ジェットの速度が光速に近くジェットが吹き出す方向と視線方向(天体から観測者への方向)とがほぼ一致しているときに起こる現象です。
下図を参照しながらお読みください。
左下にあるクェーサーの中心核から光るガスが速度vでP点に向かったとします。
観測者の視線方向とガスが向かった方向のなす角度をθ、クェーサーの中心と観測者の距離をd、クェーサーからガスPへの距離r、ガスPから垂線が接するところをQとします。
このとき、PQをy、クェーサー中心からQをxとします。
ここで、クェーサー中心からガスが出発した時刻を t = 0 とします。その瞬間にクェーサー中心から発した光が観測者に届く時刻t1は t1 = d/c になります。
一方、ガスがPから発した光が観測者に届く時刻t2は、ガスがクェーサーからPへ移動する距離をrとすればそれに要する時刻は r/v、Pから観測者までの間を進むのに要する時刻は (d – x)/cとなります。
従って t2 = r/v + (d – r cosθ)/c となります(x = r sinθを使用) 。観測者は、時刻t1と時刻t2の間に、ガスがQP間の距離yだけ移動したように見えるので、見かけの速さはuとなります。
これに数値を代入して見たのが以下の計算となります。
この式において、v = 0.9c (c:光速)、θ = 10°
として、計算すると 1.4cとなります。
見かけ上は光速を超えることになります。
[相対論的ビーミング]
放射されるジェットが光速に近い高速運度をしているときは、特殊相対論効果によって、ジェットの運動方向から見ると放射の強度が強くなる現象があります。これはビーミングと呼ばれる現象です。
速度が光速度に極めて近く、大きなローレンツ因子をもつジェットは、相対論的な光行差によって光線が前方へ集中します。ローレンツ因子をγとするとγ4倍(4乗倍)明るくなるようです。
[電波ローブ]
クェーサーなどで発見された「電波ローブ」(二つ目玉電波源)ですが、相対論的ジェットにより作り出されています。
ジェットは中心核の近くでは一様でない部分を衝撃波で蹴散らしますが、平均的な流れは相対論的な速さで進みます。そして、最終的には周囲の物質と衝突して衝撃波を形成します。これが電波ローブです。
観測されている電波ローブの年齢は10^6~10^8年ほどとされています。これから考えると、電波銀河の大きさは300Kpc~30Mpcほどで形状は非常に長いものになると予想されますが、実際には100kpcほどで形状は球に近いです。
これについて考えます。
電波銀河ではジェットの先端部分にホットスポットと呼ばれる明るい領域がありますが、ここが衝撃波発生の場所であることを表しています。
ジェット本体は相対論的速度で進みますが、ホットスポットは光速の1/10~1/100程度です。衝撃波面ではジェットの運動エネルギーが散逸され、それにより物質の温度上昇や粒子の運動エネルギーの増加 – 粒子の加速 – が発生します。
密度の薄さによりジェット中に発生する衝撃波は相対論的衝撃波になります。衝撃をうけた物質は垂直方向にも熱膨張します。
このように、ジェットを構成する物質は「コクーン」と呼ばれる卵形の領域に閉じ込められて高圧な状態となります。この圧力は周囲の物質の圧力よりも高く、熱膨張しながら周囲の物質に衝撃波を伝播させています。
これは超新星爆発で残る残骸の進化と大変似ています。
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以上、宇宙ジェットとダイナミズムについてでした。