以下について見ていきます。
・宇宙ジェットの構造
・マイクロクェーサー
・活動銀河核からのジェット
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[宇宙ジェットの構造]
宇宙ジェットの動力源は降着円盤であるといわれていいます。降着円盤の機構を解析して見ます。
まず、外部環境から低エントロピーのガスを取りいれて降着円盤で重力エネルギーを変換処理して、高エントロピーの熱や放射を外部環境に捨てます。そしてガスは宇宙ジェットとして極方向から物凄いスピードで吹き出します。
このジェットには構成される元素組成や磁場、ジェットの形態(太さや長さなど)の情報がある貴重な構造物です。
宇宙ジェットを持つ代表としてSS433がありますが、途方もない長さのジェット構造が超新星の残骸であるW50(マナティ星雲)の形を変形させています。
星間分子雲の構造と進化に大きな影響を与えており、宇宙に対するインパクトがどれほどかはこれから解明されて行くと思います。
そして、宇宙ジェットを持つ高密度天体は多くありそのジェットのスピードを生み出す機構は大体説明がつきますが、SS433のような光速の99.99%にもなる速度を生み出す機構はわかっていません。
[マイクロクェーサー]
SS433は双葉状に広がった電波超新星残骸W50の中心天体です。SS433の両側には輝線があり164日周期で変わることが発見されました。
放出されるガスが双方向に光速の26%で飛び出していき、ドップラー効果により観測点に対して離れて行く方向には長波長側に、向かってくる方向では短波長側にずれることがわかっています。
それは164日周期で歳差運動していることが確認されました。
その左右に伸びたジェットは約40分角(50パーセク)におよぶ宇宙空間に伸び超高温の軌跡からX線を放射をしています。それは太陽全放射エネルギーが4 × 10^26 J/sとすると、その10^7倍以上といわれ10^33W(ワット)以上を放射していることになります。
発見当初このSS433は特殊な天体と思われていましたが、今では数多くの同様な系内ジェットが観測されています。
活動銀河核で観測されるこのようなジェット(相対論的ジェット)がスケールが小さい系内ブラックホール天体でも起きており、ジェット質量として10億倍、オーダーとして8桁以上も異なりますが、同じような物理現象が起きているのです。
系内ジェットは現在「マイクロクェーサー」と呼ばれています。厳密にはブラックホール天体に限られるようですが中性子星を含めて相対論的ジェット天体の総称として使われているようです。
マイクロクェーサーは降着円盤とジェットの時間的発展を調べるのにクェーサーよりも最適な天体です。例えばクェーサーであるM87では1000年かかる現象をマイクロクェーサーでは数分で観測できます。スケールが異なっていても同じ物理現象が起きている恩恵にあずかっています。
[活動銀河核からのジェット]
相対論的ジェットは質量によらないブラックホール天体の普遍的な現象です。
電波銀河は活動銀河の一つです。放出されているジェットをほぼ真横から見ていると考えられています。それは100kpc(キロパーセク)におよぶジェット構造をもちます。
このジェットは宇宙空間の濃密なガス空間にぶつかることで電子加速が発生し「ノット」と呼ばれるものが色々な波長で輝きます。ノットでは電波からX線にわたりシンクロトロン放射(※1)がおきていると考えられています。~100TeVのエネルギーを持つまで加速されていることを示します。
ジェットの終端はホットスポットとなっていて明るく輝いています。このローブからは電波領域ではシンクロトロン放射がX線域ではコンプトン散乱(※2)が観測されています。
※1:シンクロトロン放射
光速に近い速度の荷電粒子(主に電子)が磁力線の周りを円運動または螺旋運動しながら進むときに放出される電磁波
※2:コンプトン散乱
X線を物体に照射したとき、散乱X線の波長が入射X線の波長より長くなる現象
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以上、宇宙ジェットその構造でした。