以下について見ていきます。
・連星系
・X線と降着円盤モデル
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[ブラックホール連星系]
今まで見てきたように高密度天体である白色矮星や中性子星は存在することは確かです。従ってそれよりも高密度なブラックホールは高密度天体を持つ連星系を探すことで存在を確認することが出来るはずです。
・X線源の多くは高密度天体と恒星の連星系であることは分かっています。この連星系で質量降着が起きていることも確かで、以前に質量降着のメカニズムを探りましたがX線を放射することは明らかでした。
・上記によりX線源を同定できるので、軌道運動を測定することが可能です。これにより質量が求まるので、太陽質量の三倍以上ならばブラックホールであることがわかります。
・ブラックホール連星系であることがわかれば、他の高密度連星系との差異がわかるのでブラックホールの特異性を見つけだすことが可能になります。
白色矮星や中性子星は降着円盤の内縁まで運ばれたガスがその星の表面にぶつかり運動エネルギーを放射して解放されます。しかし、ブラックホールは物理的な表面がないので内縁に運ばれたガスは事象の地平面に消えていきます。この辺がブラックホールの特徴として現れる、光度の差として現れていると考えられます。
[X線と降着円盤モデル]
ブラックホール(X線連星系)のX線源はハード状態とソフト状態を示すことがわかっています。
ハード状態は質量降着率が低くてX線光度がエディントン限界光度の数%未満で発生します。このときの降着円盤はシュバルト半径の数百倍から内側では幾何学的に厚く光学的には薄い(高温降着流モデル)と考えられています。
またソフト状態は質量降着率が上がりエンディントン限界光度が数%を超えると発生します。従って光度は比較的明るいです。降着率が上がると降着円盤の密度が上がって放射冷却が効くので、これにより降着円盤は平たくなり幾何学的に薄く光学的に厚い標準降着円盤(標準円盤モデル)となります。
このように、恒星質量ブラックホールの降着円盤は質量降着率(ガスの流入)の変化により二つのモデルを状態遷移します。
ブラックホールでは降着円盤の内縁に近づくにつれて一般相対論が効きはじめ最小安定軌道(シュバルツシルト半径の3倍)から内側では安定な円軌道は存在しなくなります。従ってRin(降着円盤の内縁半径)= 3Rsとなります。ここより内側ではガスは質量降着してX線を出す暇もなく事象の地平面に消えていきます。ここでちょっとした計算をしてみます。
ブラックホールにおけるシュバルツシルト半径は以下の式で求めることが出来ます。
Rs = 2GM/c^2 → 2.9(M/Ms)[km]
Gは重力定数、Mは恒星質量、cは光速、Msは太陽質量
ブラックホール連星LMC X-3という連星系ではブラックホール質量は観測から(6-9)Msと予測されています。またこのブラックホールのRinは50Kmである事が観測からわかっています。
Rin = 50km → 3Rs = 50Km
Rs ≒ 17km
M = RsMs/2.9 = 17/2.9×Ms ≒ 6Ms
このように観測結果と矛盾しません。
従って光学観測を行うことでブラックホールの質量を推定することが可能になりました。
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以上が降着円盤と恒星質量ブラックホールに関するお話でした。